9月になってからこれ聴いて落ち着こう, Hubris / Richie Beirach (ECM 1104)

早いもので、あっという間に8月も終わり、9月となりました.

という感じで入るパターン、このところ多いですね(笑)

とくに大きなイベントも予定してなかったこの夏ですけど、何かとあたふたしていて、9月になってやっと少し涼しくなったのもあるんですが、ちょっとここで一息、落ち着こうかと.

そんな中で聴きたくなる一枚を紹介します.

Richie Beirach (リッチー・バイラーク) のソロピアノ作品 Hubris.

Hubris / ヒューブリス (ECM 1104)

ニューヨーク出身のジャズ・ピアニストであり作曲家の Richie Beirach (リッチー・バイラーク, Richard Beirachとも呼ばれる) の ECM Records から1977年に発表されたピアノ・ソロ作品.

全くの余談ですが, Richie Beirach先生, 生まれた年は違いますが、ワイと同じ誕生日だったのですねぇ…永らくファンをしてましたが全く知りませんでした.

ECM Records でピアノ・ソロ作品といえば, Keith Jarrett 御大や, Chick Corea 先生が思い浮かびますが, Jarrett 御大ほど聴き手に試練を与えるでもなく(!? 失礼), Corea先生程カラフルで情熱的でもありません.

あくまでも静かに、淡々と、そして内なる炎を感じる作品.

ジャケットの図柄のような曇り空で、少しだけ肌寒い広大な景色感じられる作品.

Bill Evans を彷彿されるスタイルではありますが、いかにもECM的な「沈黙の次に最も美しい音」を感じます.

あとにも書きますが、これはRichie Beirachの力量だけではなく, ECM の絶対的な権力者, 総帥のマンフレート・アイヒャー(Manfred Eicher)の力が大きいと思われます.

聴いていてとてもリラックスできて、夏の間のドタバタを暫し忘れられ、秋に向かうこれからの季節の準備が出来そうな気分となります.

1曲目の Sunday Song がアルバム全体のモチーフとなっているようです.

アルバム最後の曲, Invisible Corridor / Sunday Song – Monday はちょっとだけ ECM 独特のあっちの世界に行ってしまいそうなギリギリのところを耐えて、アルバムのテーマでもある Sunday Song に立ち戻る、その安心感がまたたまりません.

Invisible Corridor ではピアノの内部奏法も披露してますが, あれはピックか何かをつかっているんだろか? なんて聴きながら余計なことも考えてしまいました(笑)

マンフレート・アイヒャー総帥との確執

昔の話ですが、Richie Beirach の作品すべてが ECM のカタログから消されている時期がありました.

たまたま偶然、近所の公立図書館から Hubris を見つけて借りて聴いてから、Richie Beirach の他の作品も聴いてみたい…と思ったのですが、どこを探しても見当たらない…

その理由がずっと分からなかったのですが、ECMの真実という本を読んで初めて理由がわかりました.

ECMからは Hubris を含め三作, Eon (ECM 1054), そして Elm (ECM 1142) をリリースしています.

この三作は, Richie Beirach がもともとやりたい作風ではなく、ECM レーベルからの要望、おそらくは マンフレート・アイヒャーからの指示だった、とこの本には書かれてます.

ECMの真実  リッチー・バイラークのインタビュー記事より

三作をリリースした後、Richie Beirach がやりたいコルトレーンやマイルスのような曲想、曰く「ジャズ」をやりたい、と総帥に言ったことが一つのきっかけとなったようで.

ECM以外の Richie Beirach の作品を聴いたら,全然イメージが違うと感じたんですけど、理由はここにあったんですね.

さらには、詳しい経緯は書かれてませんが、ジョン・アバークロンビーのセッションでマンフレート・アイヒャーと再び衝突した、と書かれてます.

それがきっかけで, Richie Beirach のリーダー作だけではなく、彼がサイドメンとして参加した作品も ECM のカタログから消えてしまった、とのこと.

これを読んだ当時は、アイヒャー総帥、

なんちゅうことをしてくれたんやぁぁ

という残念な思いでいっぱいでした…

それを救ったのがユニバーサル・ミュージック

ECMの真実  リッチー・バイラークのインタビュー記事より

この話には続きがあって、日本のレコード会社 ユニバーサル・ミュージック から ECM のピアノ作品を集めた再発シリーズから Hubris および Elm が日本限定で発売されることになりました.

私の手元にあるCDもその再発シリーズで発売されたものです.

日本限定とは言え、こうやってリスナーの手に音源が渡るというのはとてもありがたいことです.

ユニバーサル・ミュージックさん、Good Job!!

当然、他の作品も手に入れたのは言うまでもありません. (Eon は別の再発シリーズで手に入れた記憶があります)

ユニバーサル・ミュージックさんの再発シリーズが原因かどうか定かではありませんが、今では Richie Beirach 先生の作品 (いっしょに消された作品ともども) は ECM のカタログからみることが可能となっています.

…総裁はRichie Beirach 先生と和解されたのでしょうか?

そういえば、ECMの真実 の改訂版が出てたんですね、知らなかった.

これ読んでみたいなぁ…

この時期に聴くには最適の一枚

とはいえ、この時期に聴くには最もふさわしい一枚かと思ってます.

これを聴いてちょっと落ち着こうと思う今日この頃です.

では