Music for Large & Small Ensembles / Kenny Wheeler (ECM 1415/16)

毎年、定禅寺ストリートジャズフェスティバルがこの時期に開催される…はずなんですが、このご時世、残念ながら昨年に引き続き中止となってしまいました. この街に住む音楽ファンとしてはなんとも残念です.

街中に流れる音楽を全身に浴びることで本格的な秋の到来を感じるのが恒例となっています.

個人的な見解ですが、ジャズフェスの花はなんといってもビッグバンドです. ビッグバンドの音を野外で聴くことで季節の変わり目を実感するのですが、今年も

そこで今こそ聴きたい一枚(2枚組の作品ですが)がこれ、Kenny Wheeler Music for Large & Small Ensembles

Music for Large & Small Ensembles

Kenny Wheeler 名義の本作品、2枚組の構成となっており1枚目がビッグバンド、2枚目が小編成中心の作品が収録されています.

参加メンバーは以下の通り. 錚々たるメンバー、ECMオールスターと言っても過言じゃないです.

  • Kenny Wheeler Flugelhorn, Trumpet
  • John Abercrombie Guitar
  • John Taylor Piano
  • Dave Holland Bass
  • Peter Erskine Drums
  • Norma Winstone Vocal
  • Derek Watkins Trumpet
  • Henry Lowther Trumpet
  • Alan Downey Trumpet
  • Ian Hamer Trumpet
  • Dave Horler Trombone
  • Chris Pyne Trombone
  • Paul Rutherford Trombone
  • Hugh Fraser Trombone
  • Ray Warleigh Alto Saxophone
  • Duncan Lamont Tenor Saxophone
  • Evan Parker Soprano Saxophone, Tenor Saxophone
  • Stan Sulzmann Tenor Saxophone, Flute
  • Julian Arguelles Baritone Saxophone

Kenny Wheeler名義のアルバムで、John Abercrombie, John Taylor, Dave Holland, Peter Erskine というメンバで THE WIDOW IN THE WINDOW をリリースしています.

また、Kenny Wheeler, John Taylor, Norma Winstone AZIMUTH (クロスオーバーイレブンのテーマで有名なブラジルのAZYMUTHではありません)名義でいくつかの作品をリリースしています.

いずれの作品も如何にもECMサウンドで、冷静で知的な雰囲気が漂っています.

本作品も同様に全体的に知的で抑揚が効いた演奏ですが、その内側には熱い力が漲っている音を聴くことができます.

Disc 1

Disc 1に収録されているのは組曲 THE SWEET TIME SUITE

Part I – Opening

管楽器だけのフリーテンポでテーマが始まり、それにスキャットが加わったところでこの後に続く期待でワクワクしてきます. このオープニングのテーマがこの組曲のモチーフとなってます.

Part II – For H. / Part III – For Jan

John Taylorの静かな演奏で PartIIが始まり、それに管楽器が乗っかってくる, これぞビッグバンド!! この音を欲してたんだ.

たぶん生で聴いてたら管楽器が入ってきたところで立ち上がってたと思います. ECMには珍しい熱い演奏.

PartIIでは少しテンポを落として KENNY WHEELER のソロ. 聴きどころは Norma Winstoneのボーカルとそれに絡むJohn Abercrombieのギター. 妙な変態フレーズを連発するのですが、以外なほど曲の雰囲気とマッチしてます.

Part IV – For P.A.

テナーサックスのEvan Parkerの独壇場です. 聴いて下さい.

Part V – Know Where You Are

個人的にはこの曲がアルバムの中で一番の聴きどころかと. これぞビッグバンド.

最初は静かに静かにカッコいいなテーマが始まります. このテーマが口ずさめるほど印象的.いいやぁ、この曲カッコいいわぁ. 段々ボリュームが上がっていって盛り上がるところが最高.

John Abercrombieのコードワークがまた素晴らしい.

曲のシーンが変わって少しクールダウンしたところでJohn Taylorのピアノソロ、その後に.John Abercrombieのギターソロが始まりますが、これが曲者、 変態フレーズ連発.

ちょっとクリンチ気味の音でロックなフレーズを散りばめたソロ、ちょっと凡人には思いつかないスリリングな展開ですが、そこはJohn Abercrombie先生、曲のラストまで弾きまくりますが、ちゃんと決めるところはきっちり決める.

John Abercrombie先生が曲のエンディングまで弾きまくるギター・ソロ. ソロの後半からテンポが変わり管楽器とスキャットのテーマが被さりこの曲の最大の盛り上がり経てエンディングへ. カッコ良すぎ!!

Part VI – Consolation

Consolation – 慰め、と題された曲. Norma Winstone の静かなスキャットから入ります.
この曲はNorma Winstoneがメイン.

そして今までの熱さを冷ますクールダウンしたテンポのピアノトリオで, John Taylorのピアノソロが始まります. 口ずさめる親しみやすいテーマがとても心地よい.

テンポはそのまま、バンド全員で演奏するテーマを経て、Ray Warleighのアルトサックス・ソロが秀悦.

Part VII – Freddy C / Part VIII – Closing

Kenny Wheelerのトランペット、Peter Erskineのドラム、時折聞こえるJohn Taylorのピアノが深い森の中を散策している雰囲気を作ってます.

うっすらと聞こえるシンセサイザーはJohn Abercrombieのギターシンセサイザー?なのかもしれません.

Peter Erskineのドラムが何か発見したのか、鬱蒼とした森の中を走り始める…それをきっかけにバンド全体の演奏が始まります.

John Abercrombieの巧みなコードワークをバックにKenny Wheelerのトランペットのソロがとても心地よい.

バンド全体でリラックスした雰囲気で奏でるテーマの後、ドライブしたこの作品の功労者ともいえる Peter Erskineのドラムソロ、そしてバンド全体で

じゃーん

とエンディング!と思ったら、Kenny Wheelerのトランペットだけ残り、無伴奏のソロに引き継がれます. ここがクライマックスの聴きどころ.

そのソロ終盤にバンド全体でフェードインして被さってくるのがPart I – Openingのテーマ.

長い航海の後、元来た港に戻ってきたような感覚、生で聴いてたらスタンディングオベーションで迎えられるエンディングかと.

50分にわたる組曲 THE SWEET TIME SUITE、引き込まれるように聴いているとアッという間にエンディング. 素晴らしい. あらかじめキッチリ構成が練られて、考えられた作品です.

Disc 2

Disc 1 のTHE SWEET TIME SUITEと比較して Disc 2 は少し自由に演奏された雰囲気を感じます.

SOPHIE

Disc1 と同じ編成で、THE SWEET TIME SUITEよりはリラックスした雰囲気の演奏.
Kenny Wheelerの疾走感あふれるソロが素晴らしい.

SEA LADY

でたぁ~!!
Evan Parker循環呼吸奏法によるソプラノサックスソロ.
鼻から空気を吸いながらサックスを延々途切れなく吹く、という奏法.

かつて一度だけEvan Parkerの演奏を目の前で見たことがありますが, 循環呼吸の途切れないソロを聴いたときには「ホントにこんなことできるんだ!?」と驚愕の一言.

ゆったりとしたテンポでリラックスした演奏, THE SWEET TIME SUITEという嵐が過ぎ去った後の風景のような. Stan Sulzmannのフルートソロが小鳥のさえずりの様に聞こえます.

GENTLE PIECE

Dave Hollandのベースソロから始まる曲. 先の曲の雰囲気を引き継ぎながら、さらにリラックスした演奏.

この曲でビッグバンド編成は終わり、この後の小編成の作品へ移行準備のような.

TRIO

Kenny Wheeler Flugelhorn, Dave Holland Bass, Peter Erskine Drums のピアノレストリオ.

コード楽器が無い分、三者ちょっと攻撃的なプレイ?

DUET 1

John Taylor PianoPeter Erskine Drumsのちょっと変則的なデュエット.
最初のトラックは両者お互いに様子見しているよう. この後の展開が楽しみ.

DUET 2

同じく John Taylor PianoPeter Erskine Drumsのデュエット.

疾走するJohn TaylorのピアノにPeter Erskineのドラムが拍車をかける.
ちょっとChick Coreaのソロピアノを思い起こします. 素晴らしい.

DUET 3

ピアノ、ドラムの変則デュエットの最後は静かな雰囲気を創り出しつつも、両者互いに静かな戦いを挑んでいるような.

TRIO

ふたたびKenny Wheeler Flugelhorn, Dave Holland Bass, Peter Erskine Drums のピアノレストリオ.

後半のスピード感にあふれる演奏が素晴らしい.

BY MYSELF

本作を締めくくるラストは

といったメンバーで演奏される、いかにもECM的なサウンド.
作品を締めくくるのにふさわしい曲です.

本作がリリースされたすぐあとにリリースされたWidow in the Windowはこの曲と同じメンバーで録音されてます. もしかしたらこのトラックを録音した勢いで作られたのでしょうか?

Kenny Wheelerの他の作品

この記事を書くために手持ちのKenny Wheelerの他の作品を聴いてみました.


これ, GNU HIGHが素晴らしいこと、再発見.

Norma Winstone

Norma Winstone さんのスキャット、ボーカル無しに本作品は成り立ちません.

Youtube で探してみると 2019年にTHE SWEET TIME SUITEを演奏する動画を見つけました.
70歳を過ぎてもまだまだお若い.

それにしてもジャズフェスで誰かTHE SWEET TIME SUITEを演奏してくれないかなぁ…生で是非このナンバー聴いてみたい!!

秋を迎えられる準備できた?

気が付いたら庭のキンモクセイが咲いてました.

人間界のイベントはなくても自然界の季節は巡る.

この記事を書くためにMusic for Large & Small Ensemblesを何回も聴きました.

お陰様でなんとなく秋を迎えられる準備が出来たような気がします. やっぱりこの時期にビッグバンドを聴くという習慣が沁みついてるんですね.

ではまた.