n月刊ラムダノート Vol.3,No.1 #3 CPUは如何にしてソフトウエアを高速に実行するのか

技術書出版ラムダノートに非定期に出版されている計算機好きのための技術解説情報誌 “n月刊ラムダノート” の最新号,  Vol.3 No.1(2021)の記事 “#3 CPUは如何にしてソフトウェアを高速に実行するのか” がとても参考となったので紹介します.

月刊ラムダノート Vol.3,No.1 #3

n月刊ラムダノートの最新号  Vol.3 No.1(2021)に掲載の記事は以下の通り.

  • #1 検索エンジンのしくみ
  • #2 「継続」のひみつ
  • #3 CPUは如何にしてソフトウェアを高速に実行するのか

3番目の記事がとても貴重な情報が分かりやすく説明されています.

#3 CPUは如何にしてソフトウェアを高速に実行するのか

CPU関連のハードウェアエンジニア takenobu.hs さんが書かれた本記事の紹介文を引用する

CPUの理論的な動作については入門書も多い。しかし現代の実用的なCPUのように高速でソフトウェアを実行できるようにするためには、その単純な動作の繰り返しに加えてさまざまな実装上の工夫が必要になる。実装に関する情報は非公開のことも多く、特にソフトウェア技術者にとってはブラックボックスに見えることも多いだろう。
本稿では、100MHz~1GHz級のCPU開発に携わってきたハード技術者の立場から、CPUの高速化を支えるパイプライン化とスーパースカラ化の概要について説明する。また、現実のコンピュータシステムで高速化を阻むいくつかの要因と、それらを乗り越えるためにCPU製品に導入されている各種の機能についても説明する。

本記事の紹介文から

CPUがクロックを無駄にしないで如何に実行する命令の「密度」を上げている工夫をハードウェアとソフトウェアの両面から解説しています.

命令の密度を上げるさまざまな工夫

本記事では無駄なく命令の実行密度を上げる工夫、およぼそれを阻害する事柄の情報を以下の様に述べられています.

  1. 逐次処理、 パイプラインとスーパースカラ等
  2. データ依存関係、演算命令によるレイテンシサイクル等
  3. 分岐命令、遅延分岐等
  4. キャッシュメモリ
  5. 仮想記憶、仮想記憶がなぜCPUを遅くさせるか
  6. I/O、I/Oアクセスはなぜ遅いか
  7. システムコール、例外、割り込み. 命令流の特別な切り替えでCPUが遅くなるのか.

なかなかこれだけCPUのハードウェアとそれに関連したソフトウェアについてまとまった情報を読める記事は無いかと思います. 貴重な情報です.

CPUを無駄なくつかうためには

かつてリアルタイムで動作するディジタルフィルタを開発した経験があります.

A/D コンバーターの1サイクル内という限られた時間で定められたフィルタ処理を行う必要があり、データ演算の順序や遅延分岐命令を使ってクロックの無駄が発生しないように工夫した記憶があります.

その当時はアセンブラで開発していたので逐次処理やデータ依存関係を意識していましたが、最近はプロセッサの高性能化とともにCコンパイラも賢くなったのでプログラムを書くときにそれらを意識することはあまりなくなりました.

ただ、例外、割り込みの頻発はCPUクロックを無駄にするため、システム設計でそれらの発生頻度などは留意するべきかと思います.

また, キャッシュメモリについても設計時は注意が必要です. 特にデバイスドライバでは.

キャッシュメモリが有効/無効の場合で処理クロック数を比較すると何倍も差が出るケースがあります.

言語処理系が賢くなって普段のプログラミングではCPUのハードウエアを意識することもあまりないかもしれませんが、想定した性能が出ない場合、この記事のような知識が不可欠かと思います.

是非一読されることをお勧めいたします.

技術書出版ラムダノート社

なかなか興味深い技術書を出版する会社です.

いま、この本を読んでいますがなかなか面白い内容です. 自分の業務と全く違う分野ですが、とても参考になる内容.

読み終わったところで紹介記事を書いてみたいと思います.

それでは