パトリオット 特命諜報員 ジョン・タヴナー

Amazon Primeに加入してから数年になります. 加入したきっかけ、利用している理由はまた後日書こうと思ってます.

自宅では Fire Stick TVを使ってAmazon Prime Video を楽しんでます. 特に海外のTVドラマを良く観ます. TVドラマの1エピソードがだいたい45~50分なので空き時間に観るにはちょうどいいですね.

AMAZON がオリジナルで多くの映画やドラマを制作していて、その中でハマった一本がこれ.
パトリオット ~特命諜報員 ジョン・タヴナー~

シーズン1

あらすじ

紹介のページによると

イランの核武装防止のため、ジョン・タヴナーは安全策を捨て、非公式諜報員として活動を始めるためアメリカ中西部の工業用配管企業の社員として潜入.

…とあるので、最初はてっきり、同じくAmazon Originalドラマ ジャックライアンのような作品かと思ってたんですが…それと比較するとスピード感は無いし、なんだか作風が暗いなぁ…とエピソード1の冒頭で早々に観るのを辞めてました…

ところが、何かの機会でこのドラマ、ジョン・タヴナーはサスペンス・アクションものではなくて、ブラック・コメディーだと知り、再度観始めたら、これが面白くてこの世界にどっぷりはまっちゃいました.

イランの核兵器開発を阻止するため、核兵器開発に消極的なイランの選挙候補に選挙資金を支援するためルクセンブルクに大金を持って向かうが手違いで別の者の手に渡ってしまう. イランでは核兵器推進派が当選してしまう、大金を取り戻すため殺人を犯してしまう、
…等々ストーリは悲惨な感じがするけれども、なぜかこの世界に引き込まれてしまいます.

どこか変、そして愛すべき登場人物たち

主人公であるジョン・タヴナー、潜入先ではジョン・レイクマンを名乗るこの人物.
物語の中では本名を名乗ことはほとんどないので以降はジョン・レイクマンと呼びます.

諜報機関に所属していたが、誤って間違った人を射殺してしまったトラウマを抱えている. 表情は乏しい、精神のバランスを崩すと自作の曲を歌うフォーク・シンガーでもある. その歌がとても良くこのストーリーとマッチしてます.

信じられないミスをする反面、目的を達成するためなら躊躇なく暴力を行使する. その表情はどこか悲しげ.

シーズン1のテーマ曲がとても良いんです. Vashiti Bunyan の Train Song.
よくぞこの曲をテーマ曲に持って来た、と. 素晴らしい選曲.

登場人物、ジョンの父、兄、潜入先である工業用配管企業の上司、同僚、男どもみな例外なく熱心にそれぞれの役割を担おうとする…

…が、しかし皆例外なく報われない…そして皆どこかおかしい.

それに対して、女性たち皆例外なくとても強く、まともで、そしてしたたか.

達成困難な目標に対して賢明に取り組んではいるが、うまくことが進まない.

その景色を当事者の視線で観るともの悲しいが、引いた目で観るとどことなく滑稽、そしてちょっと残酷な感情を持ってしまう.

舞台はルクセンブルクという設定だけども、実際に撮影されたのはプラハとのこと.

(…というかカレル橋とか映ってるのでわかるひとはすぐわかる, そのいい加減さも魅力のひとつ)

その街角の景色もまたとても素晴らしい.

シーズン2

あらすじ

選挙工作に用意した大金は奪われ、奪った相手を殺した上、殺人容疑で追われている上、こともあろうかジョンを追っている女性刑事がその大金を持ってパリに逃げる、という予測もつかない展開で始まるシーズン2.

イランの核開発推進派の高官がパリに滞在、今度はその高官の暗殺を計画するが、銃すらない状態. 銃の手配からすったもんだする状況、全く遂行不可能に思える計画. でも男どもは懸命に取り組む…が、思うようにことが運ばない…それに対して女性たちは冷静で、そしてしたたか.

タイトル曲は Beastie Boyes の Sure Shot. シーズン1のテーマ曲とはうって変わった雰囲気で、最初はちょっとなじめなかったけれども、観ていくうちになんとなくこの曲が使われたのが分かってきた. 狙ったらはずすな…ということかな.

最後には救いが…

多少のネタバレにはなりますが、最終的には違った方向で皆救われるカタチに落ち着きます.

ただ、到底遂行不可能な計画を遂行していく姿、当事者は悲劇かもしれないけれども、引いた目で観ている第三者にとっては喜劇として映るかもしれません.

この悲しいけど笑えてくる世界観、これがとても良くて、全シーズン観終わった後、ジョン・タヴナーロスに陥りました. レビューの中にはストーリーがなくて退屈だ、という意見もあります. 確かにその通りなんですけども、際立ったストーリーがなく手もその世界観に惹かれてしまってます.

以前に全シーズン観た Six Feet Under もはっきりとしたストーリーは無かったものの、その世界観に惹かれてしまいました. ストーリー展開以外で魅惑する、本作品とならび貴重な作品だと思います.

https://youtu.be/VT6Fq1ENb8s

あなたの隣にもいるジョン・レイクマン

ときとして、到底達成不可能な目標を押し付けられることがあります.

到底不可能な開発スケジュール. 連日の深夜にわたる残業、休日出勤の連続、バグはいっこうに減らず問題ばかり発生. 理解不足の上層部からのプレッシャー、そしてしまいにはだんだん何をやっているのか、何のためにやっているのかわからなくなってくる…これってデスマーチっていうんですけどね.

実際にやっている本人たちは一生懸命なんだけど、周りの無関係な人たちからはおそらく喜劇の様に見えてたんだろうなぁ、想像に難くないです. 数年たってデスマーチなプロジェクトを思い起こすと何であんなことをクソ真面目にやってたんだろな?と自分でも当時の自分をコメディのように思いますから…

なので、あなたの身近に、あるいはあなた自身がジョン・レイクマンであるかもしれません.