俺たちのPatが帰ってきた! Side-Eye NYC (V1. IV) / Pat Metheny

我らのPat Methenyが若い新進気鋭2名のミュージシャンと共に新譜をひっさげて

帰ってきた!!

という印象の作品.

買って来てからもう数えきれないくらい繰り返し聴きました、ホント.

今年買ったCDの中で一番いいかもしれません.

…ってまだ今年終わってないですが

いやホント、これ買いです. 冗談抜きで.

Side-Eye NYC

NHKのBSで放送されたライブをご覧になった方もいらっしゃると思います.

2019年9月 ニューヨーク・タイムズスクエアのライブハウス “Sony Hall” で収録.

日本版のみボーナストラックとしてThe Bat が収録,

メンバーは

  • Pat Metheny – Guitar, Guitar Bass, Orchestrionic
  • James Francies – Organ, Piano, Synthes
  • Marcus Gilmore -Drums

というベースレスのトリオ編成. キーボードの James Francies が低音部を兼任.James Franciesのベースパートが凄すぎて, ベーシストの存在意義を脅かします.

It Starts When We Disappear, Zenith Blue

一曲目のIt Starts When We Disappearを耳にした瞬間、初めて聴く曲なのに懐かしさでいっぱいとなりました.

そう、かつてのStill Life (Talking)Letter From Homeの頃のPat Meteheny Groupそのもの.

13分を超える比較的長い曲ですが、聴きほれているうち、あっという間に終わります.

キーボードのJames Franciesが亡くなったLyle Maysの音を再現してるんですもの. もう二度と聴くことができなと思ってた音が聴けたんですもの. 感激しないはずがないです.

そしてPatのギターの音やフレーズも当時に帰ってきたような. やっぱり Pat には Lyle のようなキーボード奏者が必要なんですよ.

それでいて時にはJoe ZawinulJan Hammerっぽい音も垣間見れる、多才なプレイヤー. James Francies恐るべし.

Marcus Gilmoreのドラムもなんとなく Paul Wertico のプレイスタイルに似ているような.

アルバムラストの Zenith Blue も新しく書き下ろされた曲のはずですが、なんだかとても懐かしい.

曲の途中、Still Life (Talking)に収録の“Third Wind”を思わせるところがあって、ちょっと「にや」っとしたり.

アルバムの1曲目に収録のIt Starts When We Disappearとラストの Zenith Blueは実際のライブ後半に演奏された曲とのこと.

ライブ後半のプログラムは, Pat, James, Marcusの三人と音楽演奏機械(Orchestrionic)との共演であったそうな…

音楽演奏機械(Orchestrionic)との共演

Pat Methenyが音楽演奏機械(Orchestrionic)をバックに一人でギターを演奏するアルバム The Orchestrion Project は聴いたことがあります.

当然、いっしょに演奏する機会は、人のミスに合わせてくれることはありません.

ミスが許されない中で演奏、というのが頭の中のどっかにあるのでリラックスして聴けないし、機械と一緒に演奏する意義が今一つ見出せなく、The Orchestrion Projectをちょっとさめた目で見てました.

It Starts When We DisappearZenith Blueを聴いたとき、音楽演奏機械(Orchestrionic)と一緒に演奏してるとは全く知らず, Marcus Gilmoreってドラマーってめちゃくちゃ手数が多いなぁ、と思ってました.

それが音楽演奏機械によるものとは、いやはや. まったく気が付きませんでした.

そう言われてよく聴くと It Starts When We Disappear の一部、ほんの少しフリーテンポぽくなるところで微妙に人間と機械のタイミングがずれるところがありますが, 次の瞬間にピタリとタイミングを合わせてくるMarcus Gilmoreとベースパート担当James Franciesのリズム隊の力量は恐るべし、です.

Bright Size Life, Sirabhorn

Pat Metheny のデビューアルバム, Bright Size Lifeから二曲

あるバムタイトル曲 Bright Size LifeSirabhornを収録.

Bright Size Life は Pat とベースに Jaco Pastorius、ドラム Bob Moses で演奏されたものですが, ここではキーボードのJames FranciesJaco Pastoriusのフレットレスベースを再現しているのが聴きもの.

インタビューで Pat Methenyは40年以上前にリリースされたアルバムBright Size Lifeが自分の音楽の中核であり, そこから四十数年の音楽キャリアの中でずっと長い曲を演奏してきたようなものだ、と語っています.

キャリアが長いと触れてほしくない黒歴史がありがちですが、Patはそういうものは無い、と.

さらには、昔の曲は今の方が楽に上手く弾ける、なぜなら昔より今の方が上達してるから、とも発言しています.

全く頭が下がる一言です…これは地道な練習の積み重ねが無いと言えない一言.

ワイ個人的には Better Days Ahead が優勝!

なんと、アルバム Letter From HomeからBetter Days Aheadを取り上げてくれたのは感激.

原曲のバリバリのラテンリズムとはうって変わって、ソファーに座ってゆっくり語り掛けるようなアレンジ.

アルバム Letter From Home がリリースされたのはいまから32年前の 1989年.

個人的な話で恐縮です. 結婚してすぐ、自分の可能性を信じて転職したころ. 職場の人たち実力が凄すぎてなんとか彼ら、彼女らに追いつこうと(自分としては)結構頑張ってた時期にずっと聴いてたアルバム.

このアルバムに収録されてる Better Days Ahead を聴くと当時のことを思い出します.

オリジナルの Better Days Ahead と,このアルバムのBetter Days Ahead. 2曲聴き比べることで、当時頑張ってた自分と定年を目の前にしている今の自分が会話しているように思えました.

当時の自分が今の自分を見て及第点をくれるでしょうか?

たぶんぎりぎり大丈夫じゃないかなぁw

…なんてこの曲を聴きながらそんなことを思わせます.

なんだぁ、やっぱりみんなROCK好きなんだ~ Lodger

Jeff BeckのCause We’ve Ended As Lovers(哀しみの恋人達)を彷彿させるようなロックギターインスツルメンツ.

Pat はオーバードライブが効いた音でチョーキングを決めて、Marcus はクラッシュシンバルをバシバシ叩き、Jamesのオルガンはロックそのもの.

なーんだ、ジャズのエリート達もやっぱりロック好きなんじゃないか~、とちょっとニヤッとした一曲.

俺たちのPatが帰ってきた!!

最初にも書きましたが、このアルバムを聴いた第一印象が

俺たちのPatが帰ってきた!!

別に活動を止めてたわけではなく、コンスタントに作品をリリースしてたのですが…

ECM レーベルに属してた頃の全作品はそれこそレコードが擦り切れる程聴きました.

その後, Geffenに移籍後, Still Life (Talking), Letter From Home, We Live Hereあたりまでは熱心なリスナーでした.

ところが、それ以降の作品、グループ名義、ソロ名義とも買ってはみたものの、繰り返し聴いた記憶があまりない…いくつかのCDは手放したりしてます.

ごく最近の作品はSpotifyで聴いてみてCD購入まで至らない、というありさま.

Pat 先生は デビュー作 Bright Size Life をコアとして、その音楽的な世界をどんどん進化させて行ってますが、凡人のワイとしてはちょっとついていけてない、というのが正直なところ.

あとは, 音楽的な相棒 Lyle Mays を失ったのも大きいところかと思います.

キーボード奏者がいる編成の作品を聴いてみても、今一つ物足りない.

あと気が付いたこと

Pat は同年代や年上のメンバーと演奏した作品はとても良いけど、年下の若手と演奏した作品はちょっと聴きづらい…演奏は素晴らしいけどなんだかリラックスできない…

たぶん、(音楽学校で教鞭をとっていたことも関係するのかな?)若手との演奏は指導者という立場になってしまうのかと…そのため演奏がどうもピリピリしている、という感触を受けます.

ところが本作品で共演したJames FranciesMarcus Gilmoreはさらに若い世代.

彼らはPat Methenyを音楽を聴いて育った世代、だから自分の音楽を理解してくれる、ということをインタビューで話してました.

やはりPatの音楽を理解してくれるメンバーが必要だったんでしょう.

自分を理解してくれる仲間と出会ったことで、いったん出発点に近いところに戻ってみようか、ということじゃないかなぁ…なんてこれ聴きながら思ったりしてます.

Patが遠くに行ってしまった、とお嘆きの貴殿、貴女. 是非ともこの作品を聴いてみてください. 損はさせません、まさに

Pat is Back!!

追伸

ジャケット内側に気になる記述が…

SIDE-EY CHRONOLOGY (年表) とありますが、この作品の続編があるのか!?

それともリリース済みの作品があってワイが知らないだけ!?

いずれにせよ興味深い記述…ちょっと期待しちゃいます.

それでは