Budapest Concert / Keith Jarrett (ECM 2700/01)

去年10月にリリースされたこのアルバム, このアルバムには思い入れがあったのですが、なぜかいままで買いそびれていましたが、やっぱり買ってよかったです, というのが結論です.

自分としてもこのアルバムには思い入れがあっただけに、なんでいままで買わなかったんだろと…

2019.7.1 撮影

Budapest Concert

2016年にHungary Budapest の ブダペスト芸術宮殿 (Béla Bartók National Concert Hall) で演奏されたピアノソロを収録した作品. CD 2枚組.

ブダペスト芸術宮殿の地図を見るとジャケットの写真はそこから見た風景かもしれません.

そういえば、Keith Jarrett の作品のジャケットにその地の風景の写真が使われたのは初めてかもしれません.

Jarrettの家族のルーツがハンガリーであるため、このブタペストのコンサートは帰郷のようなものとみなしている、とECM recordsの解説にあります. ドナウ川越しに見えるブダ城のブダペストの風景をジャケット写真に使ったところは、ハンガリーに対するJarrett氏の思い入れの強さがあるかもしれません.

Disc 1 (Part I – Part IV)

以前のソロ・ピアノ作品と比較すると短い曲が多いのが本作品の特徴. やはり体力的な理由によるものでしょうか? 聴いている我々も体力的な理由でこのくらいの長さがありがたいです…

一曲目から飛ばしてきます. Part I が一番長く 14:28. 一つのテーマをどんどん発展していき、どのような展開となるのかを素直に楽しめます.

Disc 1はそんな一つのテーマからの展開を楽しむように作られているように思えます.

かつてのPiano Solo作品、例えばケルン・コンサートやブレーメン・ローザンヌと比べると何か自由に弾いてるような印象を受けます. かつてはやはり Jazz といったフォーマットにある程度とらわれていたのでしょうか?

率直に言って Disc 1 は癒しなどいう言葉とは無縁のような気がしてます.

音楽を聴いて、それから癒しや高揚感というのを時として求めすぎじゃないか、という気がこの作品を聴いて考えた次第.

単に音楽を聴く行為そのものを楽しむ、というのを大切にしなきゃいけないのかなぁ、とDisc 1を聴きながら思った次第.

Disc 2 (Part V – Part X11, Encores)

Disc 2 のしょっぱなの Part V は美し過ぎます…このブログを書きながら聴いてますが、ついつい聴きほれてしまいます…Part VIIもそれに劣らず美しい…

Part XIも美しい, 美し過ぎる…けど、先に書いたように単なるBGMにするにはもったいない.

最後の Part XII はやはり Bluse, Jarrett御大が鼻歌歌いながらブルースのフレーズ弾いてるのを聴きながらニヤニヤしちゃいます.

Answer Me, My Love

アンコールとして演奏されているのが It’s a lonesome old town と Answer Me, My Love の2曲.
Answer Me, My Love を Spotify で先行公開されたのを聴いて、完全にやられました.

ミストーンとかあっても関係ないんです、これはテクニックとかを超越して Keith Jarrett でなければ作り出せない音楽、彼の病状を考えるとこれが最後の作品になる可能性になるかもしれません…とても悲しいですが.

個人的にはこのAnswer Me, My Love1曲だけでも買いだと思ってます.

Solo Piano 作品でちょっと興味があること

基本的に Solo Piano 作品は全くの即興演奏だと思っていますが, どの程度即興なのか、この作品を聴いてみて気になってます.

全く何の用意もなくピアノの前に座るのか、それとも結婚式のスピーチよろしくある程度の起承転結を考えてから演奏に臨むのか…ちょっと知りたいところです.

例えばケルンコンサートのPart IIcなんか、あんなキャッチ―な曲なのに全くの即興だったらそれは凄いことだと思ってますが、実際はある程度の用意があったのか…どうなんでしょうかね?

追記 (2021.3.7)

やはり ケルンコンサートのPart IIc は前もって “Memories Of Tomorrow” という作品として作曲されたものだ、ということをこのブログを読んだ方から教えていただきました.
ホントにありがたいことです.

“Memories Of Tomorrow”について調べてみると私と同じような疑問を持っている人がいたようです.

ブダペストの思い出

このアルバムに特別の思い入れがあるのは2019年の6月末にブダペストに旅行に行ったからです.

このCDジャケットを見るとその時の美しい風景を思い出します. 「ドナウの真珠」と呼ばれるのは納得です.

ドナウ川越しに見るブダ城

この写真を見るたびにとても幸せな気分になります.

狙って撮ったわけではなく、バスの中から偶然に撮ったものです. ドナウ川の岸辺にいる人たちが何かとても幸せそうに語り合う景色.

ドナウ川の岸辺で語り合う人たち

こういう光景が世界のどこかにある、ということを知っているだけで何か救われます.

その時に撮った動画です.

その地からやってきた音楽、これを聴くことができるのはとてもありがたいことです.
そして, Answer Me, My Love を聴くたび、その美しさとドナウ川の幸せな光景が目に浮かびとても切ない気持ちになります. 貴重な一枚です.